第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

セナと二人きりになる。

「相変わらず、あの人は……」
ため息混じりにセナが呟く。

「ねぇ、約束ってなに?」
思わず訊いてしまう。

「……内緒です」
セナの顔は少しだけ真剣で、頬も微かに赤い。

「えー」

「いいません」
ピシャリと返されて、私はちょっと口を尖らせる。

「……あ、そういえばさ、ディランがね。セナとはお酒を交わした仲だって言ってたけど、本当?」
思わず探るように訊く。

セナは一瞬、視線を逸らす。
「……本当です」

「仲良いんだ」
ちょっと嬉しそうに返してみるが、セナの答えは微妙だ。

「仲良くは、ないです」

その声は少しだけ歯切れが悪く、肩の力も抜けていない。

「出来ればなかったことにしたい記憶です」

その言葉に、私は思わず眉をひそめる。
一体、何があったんだろう。

セナの視線が、どこか遠くを見ているようで、
何か言えないことを抱えているのが分かる。

――不思議と、気になって仕方がない。
でもこの様子では教えてくれなそうだ。


「そうだ、騎士団の方はどう?」

統合の話が決まって、みんな大忙しだろう。

「はい、そちらは順調に進んでいます。
今後の任務も、メンバーを入れ替えながら調整する予定です」

「そっか…」

少し安心したように頷きながら、私は胸の中でほっと息をついた。