第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「す、す、」
思わず言葉が途切れる。

「すす?」
クスッと笑うディラン。
……なんかムカつくな、と思いつつも、頬がほんのり熱くなる自分に気づく。

「……何よ、その笑い方」
思わず口を尖らせる。

「だって、可愛いんだもん」

そう言って、ディランは少し首をかしげて笑う。
……ずるい、なんでそんな簡単に胸がキュンとするんだろう。

「……ムカつく」
つい小さくつぶやくと、ディランの笑みがさらに柔らかくなる。

「可愛いって言われて、怒るのもまた可愛い」

言葉にしながら、ディランは軽く肩をすくめる。
頬が熱くなり、思わず目を逸らす自分がいる。


すると騒がしく慌てた声が聞こえてきた。

「殿下ーー!またこちらに!」
オーウェンが駆け寄ってくる。

「今日は早いな……」

そう呟くディラン。
その後ろから、セナの姿も見えた。

「なるほど……スパイがいるようだ」

ディランの小さな笑みに、思わず顔がゆるむ。

「殿下……お嬢様に会いに来すぎです。
約束、忘れましたか?」

セナが真顔で問いかける。
私は思わず首を傾げる。
何の話?

「わかったよ、そろそろ帰るさ」

ディランはさっと返事をして、にやりと笑った。

「あ、ティアナ」

「はい」

「誕生日パーティーは、俺がエスコートする」

「拒否権は?」

「ないよ。決定事項だ」

そう言い切るディランは、颯爽とその場を去っていった。
残された私は、少しだけ胸が高鳴るのを感じながら、後ろ姿を見送った。