「お嬢様の誕生日、もうすぐですね」
ユウリがさらっと口を開く。
「そうだね」
「誕生日パーティーは、三大伯爵家が集まりますから。
かなり盛大なものになりますね」
「……めんどくさい」
「主役が言う台詞ではありません」
即座にツッコミが入る。
「だってさ。
にこにこ笑って、手を振って、愛想よくして……」
思い浮かべただけで、肩が重くなる。
「おまけに厄介なのは――」
ユウリが、わざわざ間を置いた。
「殿下もお見えになりますね」
「……」
嫌な予感しかしない。
「おそらく、エスコートなさりたがるかと」
「……それは、いや」
反射的に言ってしまった。
ディランが嫌なのではない…
ただ
目立つ。
騒がれる。
噂になる。
あと、何より面倒だ。
「お嬢様」
「わかってる。社交として必要なのは」
一応まだ婚約者だ。
そう言いながら、頭を抱える。
「ああ……
もう、当日だけ透明人間になりたい」
ユウリが小さく息を吐いた。
「それができたら、皆そうしています」
……ごもっとも。
「……はああ」
盛大にため息をついていたところに、
コンコン。
「お嬢様、ルイ様がお見えです」
アリスがお辞儀する。
そしてその瞬間。
「ティアナちゃーん!!」
勢いよく扉が開く。
ミルクティー色の髪とピンク色の瞳が素敵な美形デザイナーだ。
お姉言葉だがれっきとした美青年。
「ルイ」
「誕生日パーティーのドレス!
試作品、持ってきたわ!」
満面の笑みで、布包みを掲げるルイ。
「早速、着てもらえる??」
きらきらした視線に射抜かれ、
私は思わず視線を逸らした。
――逃げ道、なし。
「……ずいぶん早いね」
「当然よ!
だって主役なんだから!」
ノリノリのルイに、
私は小さくため息をつき、苦笑いを浮かべる。
「……わかった。着るよ」
「やった!」



