帰りの列車の中。
のんびりと流れる景色を眺めていると、
肩に、こつん、と小さな重さが乗った。
「……テオ?」
「ん……なんか、眠いや」
「寝てもいいよ」
「でも……もったいない」
その言葉に、思わず小さく笑う。
「私は、逃げないよ?」
慣れないお弁当作りに、ケーキの用意。
きっと今日は、いつもよりずっと早起きしたのだろう。
――色々、考えてくれたんだな。
「……じゃあ、少しだけ」
そう呟いて、テオは私の肩に身を預ける。
ほどなくして、
規則正しい寝息が聞こえてきた。
温かくて、
少しだけ重くて。
でも、不思議と嫌じゃない。
動けば起こしてしまいそうで、
私はそっと呼吸を整える。
――近いな。
それなのに、
この距離が、今はとても自然だった。
肩に伝わる体温と、
静かな列車の揺れ。
くすぐったくて、
胸の奥がじんわりと温かくなる。
……このまま、もう少しだけ。
列車が次の駅に着くまで、
私は動かずに景色を見続けていた。
やがて、テオがもぞりと身を捩る。
「……起きた?」
「ん。おはよ」
「おはよ」
少し気恥ずかしそうに視線を逸らしながら、
テオは窓の外を見る。
「もう着く?」
「うん。もう少し」
「はあ……
もう、今日が終わっちゃうなぁ」
ぽつりと落とされた声。
「寂しい?」
「そりゃあね」
そう言って、照れたように笑う。
「すごく穏やかで、
すごく幸せな時間だったから」
「……そうだね」
「ねぇ、お嬢さま」
「なに?」
「世界中がさ」
「うん?」
一瞬だけ、言葉を探す間。
テオは、まっすぐこちらを見る。
冗談の顔じゃない。
迷いのない、紅い瞳。
「敵になったとしてもさ。
俺は絶対、お嬢様の味方だよ。
何があっても」
「……私を、どんな極悪人にする気なのよ」
思わず笑うと、
テオも少しだけ口元を緩める。
「そうだね。
でも、いっそその方が——」
少しだけ、声を落として。
「お嬢さまを独占できそうだし」
「失礼ね」
そう言いながらも、
胸の奥が、ちくりと鳴った。
冗談みたいに言っているくせに、
その言葉だけは、ずるい。
列車は、ゆっくりと減速していく。
今日が終わる音が、
近づいていた。
のんびりと流れる景色を眺めていると、
肩に、こつん、と小さな重さが乗った。
「……テオ?」
「ん……なんか、眠いや」
「寝てもいいよ」
「でも……もったいない」
その言葉に、思わず小さく笑う。
「私は、逃げないよ?」
慣れないお弁当作りに、ケーキの用意。
きっと今日は、いつもよりずっと早起きしたのだろう。
――色々、考えてくれたんだな。
「……じゃあ、少しだけ」
そう呟いて、テオは私の肩に身を預ける。
ほどなくして、
規則正しい寝息が聞こえてきた。
温かくて、
少しだけ重くて。
でも、不思議と嫌じゃない。
動けば起こしてしまいそうで、
私はそっと呼吸を整える。
――近いな。
それなのに、
この距離が、今はとても自然だった。
肩に伝わる体温と、
静かな列車の揺れ。
くすぐったくて、
胸の奥がじんわりと温かくなる。
……このまま、もう少しだけ。
列車が次の駅に着くまで、
私は動かずに景色を見続けていた。
やがて、テオがもぞりと身を捩る。
「……起きた?」
「ん。おはよ」
「おはよ」
少し気恥ずかしそうに視線を逸らしながら、
テオは窓の外を見る。
「もう着く?」
「うん。もう少し」
「はあ……
もう、今日が終わっちゃうなぁ」
ぽつりと落とされた声。
「寂しい?」
「そりゃあね」
そう言って、照れたように笑う。
「すごく穏やかで、
すごく幸せな時間だったから」
「……そうだね」
「ねぇ、お嬢さま」
「なに?」
「世界中がさ」
「うん?」
一瞬だけ、言葉を探す間。
テオは、まっすぐこちらを見る。
冗談の顔じゃない。
迷いのない、紅い瞳。
「敵になったとしてもさ。
俺は絶対、お嬢様の味方だよ。
何があっても」
「……私を、どんな極悪人にする気なのよ」
思わず笑うと、
テオも少しだけ口元を緩める。
「そうだね。
でも、いっそその方が——」
少しだけ、声を落として。
「お嬢さまを独占できそうだし」
「失礼ね」
そう言いながらも、
胸の奥が、ちくりと鳴った。
冗談みたいに言っているくせに、
その言葉だけは、ずるい。
列車は、ゆっくりと減速していく。
今日が終わる音が、
近づいていた。



