第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

私は吸い寄せられるように、
その絵画へそっと手を伸ばした。

指先が光の線に触れた瞬間――

ふわり、とあたたかい風が頬を撫でた。

「……え?」

紅い線が、まるで呼吸するように脈打ち、
触れた場所から淡い光が波紋のように広がっていく。

テオが驚いたように目を見開いた。

「お嬢さまに反応してる」

「これ、私の魔力に?」

「ううん、多分“気持ち”にだと思う」

「気持ち……?」

「うん。
 お嬢様がみんなを大切に想ってる気持ちに、だよ」

胸の奥が、静かに揺れた。

「……そっか」

壁画の光は、
私の心に応えるように優しく揺れ続ける。

テオもそっと手を伸ばし、
私の隣で絵画に触れた。

その瞬間、
紅い光がふわりと強くなる。

「この先も――
 お嬢さまが幸せでありますように」

祈るような声だった。

思わず、笑みがこぼれる。

「ふふ……ありがとう」

テオは照れたように視線をそらし、
けれどその横顔はどこか誇らしげで。

壁画の光が、
2人の指先を包むように揺れていた。

まるで、
古代の祈りが今も息づいているみたいに。