「……近いです」
わずかに身を引くと、ディランの影が私の肩に落ちた。
彼は楽しげに目を細め、わざと距離を詰めてくる。
「君の可愛い顔が見たくてね」
低い声が耳元をかすめ、思わず背筋が跳ねた。
その瞬間――
ゴホン、とわざとらしい咳払いが響く。
ユウリだ。
腕を組み、明らかに“見ているぞ”という視線をこちらに向けている。
それに対し、
「チッ」
アリスが露骨に舌打ちした。
彼女はディランを睨みつけながら、私の背後にすっと立つ。
まるで“これ以上近づいたら許しません”と言わんばかりだ。
2人の反応を見て、ディランは肩をすくめ、苦笑を浮かべた。
「さすが、君の執事と侍女だな。護衛として優秀すぎる」
「ありがとうございます。お帰りは、あちらですよ」
アリスが扉を指さす。
その仕草は静かだが、追い出す気満々だ。
「相変わらずクールだな」
ディランは軽く笑い、しかし視線は私から離さない。
「……それで、話を戻していいですか」
「もちろん」
「婚約を破棄しない、というのは――なぜですか」
問いかけると、ディランは一瞬も迷わず答えた。
「君のことが好きだから」
即答だった。
あまりにも真っ直ぐで、胸がどくりと跳ねる。
「……そうではなくて。
正直、ガイルの件もありましたし、この婚約も有耶無耶になると思っていました」
「そうはさせないよ」
ディランの声が、先ほどより少しだけ低くなる。
軽さを抑えた、芯のある響き。
「……」
「というかね」
彼はわずかに表情を引き締めた。
ふざけた色を消し、王太子としての顔になる。
「あれだけ盛大に婚約発表をしておいて、
やっぱり破棄します、なんて言ったら――国民が困惑する」
「まだ、あれから半年も経っていないんだよ」
静かな言葉なのに、重みがあった。
責任と覚悟を背負う者の声だ。
その真剣さに、胸の奥がじんわりと熱くなる。
わずかに身を引くと、ディランの影が私の肩に落ちた。
彼は楽しげに目を細め、わざと距離を詰めてくる。
「君の可愛い顔が見たくてね」
低い声が耳元をかすめ、思わず背筋が跳ねた。
その瞬間――
ゴホン、とわざとらしい咳払いが響く。
ユウリだ。
腕を組み、明らかに“見ているぞ”という視線をこちらに向けている。
それに対し、
「チッ」
アリスが露骨に舌打ちした。
彼女はディランを睨みつけながら、私の背後にすっと立つ。
まるで“これ以上近づいたら許しません”と言わんばかりだ。
2人の反応を見て、ディランは肩をすくめ、苦笑を浮かべた。
「さすが、君の執事と侍女だな。護衛として優秀すぎる」
「ありがとうございます。お帰りは、あちらですよ」
アリスが扉を指さす。
その仕草は静かだが、追い出す気満々だ。
「相変わらずクールだな」
ディランは軽く笑い、しかし視線は私から離さない。
「……それで、話を戻していいですか」
「もちろん」
「婚約を破棄しない、というのは――なぜですか」
問いかけると、ディランは一瞬も迷わず答えた。
「君のことが好きだから」
即答だった。
あまりにも真っ直ぐで、胸がどくりと跳ねる。
「……そうではなくて。
正直、ガイルの件もありましたし、この婚約も有耶無耶になると思っていました」
「そうはさせないよ」
ディランの声が、先ほどより少しだけ低くなる。
軽さを抑えた、芯のある響き。
「……」
「というかね」
彼はわずかに表情を引き締めた。
ふざけた色を消し、王太子としての顔になる。
「あれだけ盛大に婚約発表をしておいて、
やっぱり破棄します、なんて言ったら――国民が困惑する」
「まだ、あれから半年も経っていないんだよ」
静かな言葉なのに、重みがあった。
責任と覚悟を背負う者の声だ。
その真剣さに、胸の奥がじんわりと熱くなる。



