第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

テオが、ぱっと立ち上がる。

「じゃあ、続き行こ」

「続き……?」

「うん。まだ終わりじゃないよ」

無邪気な笑顔。
けれど、その奥にある“独占欲”みたいなものは隠しきれていない。

「散歩でもする?」

そう言うと、テオは首を横に振った。

「散歩もいいけどさ。
 俺、ちゃんと案あるよ」

「案?」

「うん。お嬢さまが好きそうなとこ」

そう言って、テオは立ち上がり、
私の手を取った。

今度は、さっきより少しだけ強く。

「ほら、行こ。
 日が傾く前に、もう一ヶ所だけ」

花畑の向こうへ続く小道。
風に揺れる花々の間を抜けて、
どこか秘密めいた雰囲気の道が続いている。

「どこに行くの?」

「着いてからのお楽しみ」

振り返ったテオの笑顔は、
子どもみたいに無邪気で、
でもどこか大人びていて。

胸の奥が、また少しだけ熱くなる。
その予感が、
足取りを自然と軽くした。

花畑を抜けた先に、
蔦に覆われた石柱と、崩れかけた壁が残る小さな遺跡があった。

風が通るたび、
古い石の匂いと花の香りが混ざり合う。

「ここ……?」

「うん。お嬢様、こういうの好きでしょ?」

テオは少し照れたように笑う。

遺跡の奥に、
なぜか“何も描かれていない”大きな石壁があった。

ただの壁に見えるのに、
どこか“意味がある”ような気配が漂っている。