第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

――その瞬間。

ピカッ、と青い光が弾け、微かに振動した。

前にディランから渡された、
コンパクト型の通信型魔宝具。

『やあ』

落ち着いた、聞き慣れた声。

『……少し、距離が近いよ』

空気が、ぴしりと張る。

「出た。お邪魔虫」

テオが即座に言い放つ。

『誰がだ』

声は穏やかなのに、
妙に圧がある。

私は思わず通信機を見る。

「ディラン……?」

『安心していい。
 覗くつもりはなかった』

一拍、間を置いてから。

『ただ――護衛対象の安全確認だ』

「今、すっごく元気だけど?」

『それは何より』

淡々とした声。
けれど、どこか納得していないのが分かる。

テオが、ふっと笑った。

「残念でしたー。今日はデートです」

横から顔を出すテオ。

『承知している』

また、短い沈黙。

『……だが、日が傾く前には戻るように』

「はーい」

返事をしながらも、
私はテオの方を見てしまう。

彼は不満そうに口を尖らせながら、
それでも、そっと手を引っ込めた。

通信機の光が消える。

静けさが戻った。

「……タイミング、絶妙すぎない?」

「そうかも」

二人で顔を見合わせて、
小さく笑う。

けれど、
指先にはまだ、さっきの温もりが残っていた。

花の香りが風に乗って流れ、
遠くで鳥の声が聞こえる。