第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

しばらく、二人で風に当たる。
テオはそのまま、目を閉じた。

「……幸せだなぁ」

「そうだね」

「お嬢様と、こうしていられるだけでさ。
俺、すっごく幸せ」

迷いのない声だった。

「……そう?」

「うん」

少し照れくさそうに、
それでもはっきりと頷く。

しばらくして、テオがぱっと目を開いた。

「そうだ。
俺、お嬢さまにプレゼントあるんだ!」

そう言って、むくっと起き上がる。

「え?
もうケーキももらったよ?」

「あれはお祝い。
これは、ちゃんと形に残るやつ」


「お嬢さま、ちょっといい?」

「……う、うん」

テオは私の髪にそっと触れ、
何かを留めようとする。

けれど――

「……む、難しい」

「かして」

差し出されたそれは、
花びらを模した小さな髪飾りだった。

中央には、控えめに輝く紅いルビー。

私は自分で、丁寧に髪に留める。

「……どう?」

テオは、言葉を失ったみたいに見つめてから、
ゆっくり息を吐いた。

「……すごい。
綺麗」

その視線が、
飾りだけじゃなく、私自身を映しているのが分かって、
胸の奥が、静かに熱くなる。

「ありがとう。
大事にする」

「うん」

テオは心底嬉しそうに微笑んだ。

そのまま、
私の方へ手が伸びてくるのが分かる。