第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ディランside

第3騎士団の面々が笑い合い、互いの健闘を称え合っている。
その様子をみつめるティアナは、誇らしげで、どこか嬉しそうで――
その姿を見ているだけで胸が温かくなる。

ティアナの周りには、手強い者ばかりだ。

テオも、セナも――。

テオは最年少なのに迷いがない。
ティアナのためなら、自分が傷つくことすら厭わない。
強い覚悟と忠誠、そして少し危うい執着まで持っている。
おまけに、勝手に“出かける約束”までしている。

セナもそうだ。
涼しい顔をして、ティアナの想いも覚悟も、
そのまま形にしてしまう男。

……あんなのがそばにいたら、好きになる。

ティアナにとって、セナは初恋の相手。
そしてセナも、ティアナを想っている。
今は俺に気持ちを向けてくれている――
想い合えているはずなのに。

それでも、不安になる。

無邪気に笑う彼女。
誰にでも分け隔てなく向ける優しさ。
その笑顔を、俺だけに向けてほしいと思ってしまう。

わがままだと分かっている。

そんな魅力的な彼女には…やはり人が集まる。


「良い騎士団員たちだな」

思わず口をついて出た言葉に、
ティアナは迷いなく頷いた。

「そうですね」

その表情はあまりにも自然で、あまりにも誇らしげで。
俺は小さく息を吐いた。

「……君は、本当に俺の想像を超えてくるな」

「なにがです?」

首をかしげる仕草が、また可愛い。

「長年、こつこつ積み上げてきたんだろう。
 この騎士団も、信頼も……全部」

ティアナは少しだけ目を伏せ、
照れたように笑った。

「大したことないです。
 頑張ったのはみんなですから」

その言葉が、嘘じゃないと分かる。
本気でそう思っているからこそ、
この騎士団はここまで強くなったのだろう。

――本当に、すごい人だ。

そう思った瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなる。

「……君がそう言うなら、そうなんだろうな」

それ以上は言わなかった。
言葉にしたら、きっと余計な感情まで溢れてしまうから。

ただ、ティアナの横顔を見ながら、
静かに誇らしさを噛みしめた。

そして同時に――
胸の奥で、ひそやかな決意が芽生える。

(負けていられない)

彼女が積み上げてきたものに、
俺も並び立てるように。