第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

私とディランは、セナたちのもとへ足を運んだ。

ディランの姿に気づいた瞬間、
第3騎士団の面々が一斉に息を呑み、慌てて背筋を伸ばす。

「セナ、さすが!」

「ありがとうございます」

勝った直後だというのに、浮ついたところがない。
……本当に、セナらしい。

「ねぇねぇ、お嬢様! 俺はー?」

突然、腕に重みがかかる。

「離れろ」

ディランの声は穏やかだが、
その笑顔の奥に、はっきりとした圧があった。

――怒ってる。

「いやだ」

「……」

「テオも、すごかったわ」

その一言で、空気がふっと緩む。

「へへん!」

得意げに笑うテオに、思わず息を吐く。

その横で、なぜかアレンが身を縮めていた。

「アレン」

「は、はい!」

緊張が声にまで出ている。

「よくやったわ」

「い、いや……でも……」

目を逸らす姿に、胸が少し痛む。

私は一歩、距離を詰めた。

「新人で、あそこまで実力も経験もある騎士団員と互角に戦えたのよ。
 十分すぎるほど立派だわ」

これは慰めじゃない。事実だ。

「あ……ありがとうございます!」

その顔が、ようやく少しだけ明るくなる。

「そうだぞ、アレン!
 あの焦った顔! なかなか見ものだった!」

ロベルトが笑う。

「俺、まだまだ精進します!!」

……いい返事だ。

そこへ、オリバー団長とエリック副団長が歩み寄ってくる。

「いや……完敗だな」

笑ってはいるが、
その目にある悔しさは誤魔化しきれていない。

――本気でぶつかってくれた証拠だ。

「俺も危なかったです。
 運が良かっただけです…」

そう言うセナの謙虚さに、思わず口元が緩む。

「違う。あれは努力の賜物だ。
 死闘を潜り抜けてきた者の目をしていた」

その言葉に、胸の奥がじんと熱くなる。

「……そうかもしれませんね」

照れたように笑うセナを見て、私は静かに頷いた。

「私も、今まで第3騎士団を甘く見ていました」

エリック副団長が深く頭を下げる。

「考えを改めます」

周囲がざわめく。

けれど次の瞬間、

「おお!気にするな!」

「そうだそうだ!」

あっけらかんとした声が飛ぶ。

……本当に、この人たちは。

堅苦しさとは無縁で、
それでも、いざという時は誰よりも頼もしい。

私は胸の奥に広がる誇らしさを噛みしめた。

――第3騎士団は、
私の誇りだ。