第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

セナ side

俺は、目の前に立つオリバー団長を見据えた。

――この人は。
かつて、お嬢様と見合いをした男だ。

思い出したところで意味はない。
……いや、多少の八つ当たりはあるかもしれないが。

悪いが、負ける気はさらさらない。

お嬢様が長年積み上げてきたもの。
信頼も、覚悟も、選択も――
それを、俺が形にする。

それが、副団長としての役目だ。

「セナ副団長。
 よろしく頼む」

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

丁寧な物言い。
だが、その奥にある気迫は隠しようがない。

「悪いが――
 騎士団統合の話には賛成だ。
 だが、ここで負けるつもりはない」

視線が鋭くなる。

「本気でいかせてもらう」

「……もちろんです」

それ以外に返す言葉はない。

「最終戦。
 第2騎士団団長、オリバー。
 対するは――
 第3騎士団副団長、セナ」

空気が、一段階張りつめる。

――開始。

「我が剣に従え。アクアマリン」

淡い青白い光が刀身を包み込む。
氷の魔宝剣。
静かで、冷たく、
そして――揺るがない。

闇夜を切り取るように、
剣の輪郭が鮮明に浮かび上がる。

踏み込む。
一合、打ち合っただけで分かる。

剣が、重い。
さすが団長だ。

「――強く、硬く、ヘマタイト!」

オリバーの魔宝石が黒光りするように輝き、
重厚な力が剣身に宿る。

その一振りは、まるで岩を砕くかのような圧力を帯び、
こちらに押し付けられる。

技術だけじゃない。
経験と責任、そのすべてが
刃の重さになってのしかかってくる。

だが――

俺も、退くつもりはない。