第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「次は……セナか」

「はい」

短い返事。
その声には、揺れが一切ない。

「相手は、第2騎士団団長――オリバー。
 ……なかなか、手強い相手だな」

「そうですね」

淡々と答えながらも、
セナの視線はすでに闘技場へ向いている。

オリバー。
子爵家の出身で、代々武器製作に携わってきた家系。
騎士団員たちに良質な武器を安価で提供し、
そのメンテナンスまで請け負う。

現場を知り、武器を知り、
そして――戦いを知っている男。

英才教育という言葉が、これほど似合う騎士もいない。

技術も、経験も、判断力も。
すべてが本物。

……正直に言えば、
相手としては、最悪に近い。

それでも。

セナは一歩も退かない。
背筋を伸ばし、
いつもと変わらない表情で、そこに立っている。

その姿に、私は何も言わなかった。

言葉よりも、
彼自身が選んだ覚悟を信じるべき場面だ。

胸の奥で、そっと息を吸う。

――大丈夫。
セナは、こういう時こそ強い。