第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


この国は、双輝(そうき)アレキサンドライト王国。

自然と鉱物に恵まれ、採掘から製造、加工に至るまで、宝石に関わるすべてを国の礎としている。

私たちの暮らしも、戦いも、政治さえも――
その中心には、常に“宝石”があった。

魔宝石と呼ばれる不思議な力を持つ宝石を剣に嵌め込むことで
戦う力を得ることができる。

そしてそれを悪用し、魔女の雫から紅血にかえ途方もない力を欲していたガイルとの戦いを終えたのが2ヶ月前のことだ。


「こちらの鑑定もお願いします」

「はい、お任せください」

手袋をはめ、預かった宝石に視線を落とす。
どれも輝きに満ちている――だが、その中にひとつだけ、黒い靄が絡みつくものがあった。

(……悪意)

それは、悪意をもって作られた宝石。
精巧だが、紛れもないレプリカだ。

「これは偽物ですね。
 悪意をもって作られた宝石です。不純物が混ざっています」

そう告げると、相手は目を丸くした。

「さ、さすがですね。
 我々が見ただけでは、まったく分かりませんでしたよ」

確かに、他の者には申し分のない宝石に見えるだろう。
だが、私には分かる。

悪意を宿した宝石は、黒い靄となって視えるのだから。

私は――
ティアナ・ラピスラズリ。
今日も、変わらない日常を送っている。


……はずだったのだが。



第四部 開幕