第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「私有地につき、
 魔宝石の特性解放を一段階許可。
 ただし――致死性魔法、
 および永続的後遺症を与える効果は禁止とする!」

「そして勝利条件は、相手が明確に敗北を認めた時点とする」

短く、だが重みのある宣言が決闘場に響く。

「それでは――開始!」

合図と同時に、2人が魔宝剣を発動させた。

「――加速する、トパーズ!」

アレンの剣が黄色に輝き、雷光が刃を走る。
次の瞬間――

足元を弾くように、身体が前へ射出された。

雷は外へ放つものではない。
彼自身の推進力へと変換する魔力。

――速い。

一拍遅れて、観客席がざわめく。
対するクリスも、一瞬だけ目を見開いた。

明らかに想定を超えている。

さっきまであれほど緊張していたのに、
オドオドした新人の姿は、もうどこにもない。

いま闘技場に立っているのは、
自分の力を信じて踏み込む――騎士の顔だ。

第2騎士団の席も、いつの間にか静まり返っている。
嘲る声は消え、
代わりに視線が、アレンの剣の軌道を追い始めていた。

……やっぱり。

私は、知らず口元を緩めていた。

アレンは確実に強くなっている。
技だけじゃない。
踏み出す覚悟も、
「勝ちに行く」意志も。

一方、クリスもすぐに構えを取りなおす。

「増幅せよ、アキシナイト!」

斧のような剣を握る手元で、オレンジの魔宝石が光を帯びる。
振り下ろす一撃ごとに、衝撃と振動が増幅されていく。

重厚で正確。
経験と技術に裏打ちされた、揺るぎない攻撃。
まさに中堅騎士の風格。

――両者の個性がぶつかり合う。

この闘技場は、ただの戦いではない。
魔宝石を媒介とした、意志と力の競演の場だ。

その中心で、アレンの雷光とクリスの衝撃が交錯し、
空気が震える。

(ここからだ――アレン)

胸の奥で、静かに熱が高まっていく。