第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「お嬢様の長年の野望、
俺たちがつかみ取りますから」

「さすが」

思わず笑みがこぼれる。
私の野望――第2騎士団と第3騎士団の統合は、ずっと胸に抱いてきた夢だった。
平民だから、貴族だから。
同じ騎士団員なのに待遇の差がはっきりしている現状を、どうにかしたかった。

「……結局、最後は人任せだけどね」

自嘲気味に言うと、セナは即座に首を振った。

「まさか、そんなことないですよ」

その声音は、いつもより少しだけ強い。

「ここまでお嬢様が積み上げてきたからこそ、
こうして“場”が整ったんです」

胸の奥が、静かに揺れた。

「そうですよ!」

ロベルトも勢いよく続く。

「お嬢様が第2騎士団の手助けをしてきたおかげで、ここまで来られたんですよ」

(……やめてよ)

胸の奥がきゅっと縮む。
嬉しいのに、どこかくすぐったくて、素直に受け取れない。

「お嬢様だけの夢じゃありません。
俺たちの夢です!」

他の騎士団員たちのその言葉に、思わず視線を逸らした。

(夢、か……)

この場を作るために、私は第ニ騎士団への“借り”を一つずつ返してきた。
書類の山。
無茶な調整。
誰もやりたがらない後始末。

(主に――マルク……兄の尻拭い、だけど)

心の中でそう付け足して、苦笑する。

「そんな大したことじゃ…」

そう言いかけて、言葉が喉で止まった。

(否定したら、この人たちの想いまで否定することになる)

小さく息を吸う。

「……そう言ってもらえるなら、
やってきた意味は、あったのかもね」



それは、夢と呼ぶには不器用で、
でも確かに――私一人のものじゃなかった。