第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

そして――
魔宝石公式模擬決闘、当日。

「き、緊張します……」

アレンが、ぶるぶると肩を震わせていた。
顔色は見事に青い。

「大丈夫、大丈夫」

ロベルトが軽く肩を叩き、にかっと笑う。

「まあ、骨を折られる前にリタイアしろよ」

「ひぃっ!?」

その一言で、アレンは情けない悲鳴を上げた。

 

セナの方を見る。
彼は驚くほど落ち着いていて、まるでこれから戦うのが自分ではないかのようだ。

「セナは……緊張しないの?」

「緊張ですか。
 しないですね。むしろ――早くやりたくて、ウズウズしてます」

「頼もしいな」

本当に、頼もしすぎるくらいだ。

 

「お嬢さまー!」

背後から勢いよく抱きついてきたのは、テオ。
いつも通りの緩さで、緊張感など一切ない。

「おれは? おれはー?」

「お前は緊張感がなさすぎだ」

セナが呆れたように言う。

「テオも、がんばってね」

「任せて。
 骨が砕けたって勝つよ」

「こ、怖いですよ……」

アレンが半泣きで後ずさる。
その反応に、テオは楽しそうに笑った。

 

「大丈夫だよ、アレン」

私はそっと声をかける。

「あなたは、あなたのすべきことをすればいい」

「お、お嬢様……」

「大丈夫。後ろには、二人がいるから」

そう言って、私はもう一度、セナとテオを見る。

2人とも、迷いのない目をしていた。
戦うことを恐れず、ただ勝つために前を向いている。

――この3人なら、きっと勝てる。

胸の奥で、静かに確信が灯った。