第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

アレンは俯き、拳を強く握りしめる。
震えているのが、はっきり分かった。

――それでも。

「……やります」

小さく、けれど確かな声。

アレンは顔を上げ、まっすぐ前を見た。

「正直、怖いです。
 俺なんかが代表でいいのか、今でも分かりません」

それでも、一歩踏み出す。

「でも……第3騎士団が馬鹿にされるのは、嫌です。
 ここで逃げたら、ずっと新人のままだと思うから」

拳を胸に当てる。

「やらせてください。
 俺、全力で戦います!」

その言葉に、場の空気が一気に変わった。

「……十分だ」

セナが静かに前に出る。

「アレン。
 お前が一人で戦うわけじゃない」

低く、よく通る声。

「俺とテオがいる。
 それに――第3騎士団全員が、背後についている」

セナは周囲を一瞥し、きっぱりと言った。

「不安になる必要はない。
 お前は、選ばれたんだ」

その瞬間。

「そうだぞ、アレン!」

「新人とか関係ねぇ!」

「お前ならやれる!」

「俺たちが鍛えたんだからな!」

次々と声が飛ぶ。

誰かがアレンの背中を叩き、
誰かが親指を立て、
誰かが不器用に笑った。

――一人じゃない。

アレンの目に、迷いはもうなかった。

「……はい!」

力強い返事に、私は小さく息を吐いた。
胸の奥が、じんわりと熱くなる。