「それで、どうするの? こいつ」
テオが、興味を失ったように淡々と呟く。
その声音には、もはや“人間”への期待が一切ない。
「もう、用はなくない?」
「ま、待ってくれ! まだある!」
刺客の男は、縋るように叫んだ。
テオがゆっくりと視線を向ける。
その一瞬で、男の喉がひゅっと鳴った。
「……なに?」
冷たい問い。
それだけで、男の顔色がさらに青ざめる。
「でも、これを言ったら見逃してくれ!
もう二度と、お前らには近づかない! 約束だ!」
沈黙が落ちる。
風すら止まったような、重い沈黙。
「……ふーん」
テオは、ほんの少しだけ首を傾げた。
考えているというより――“遊んでいる”ような仕草。
「とりあえず、聞こうかな」
私が口を開くと、
「お嬢様がそう言うなら」
テオがゆるりと笑う。
だが紅い拘束は解かれない。
男はそのまま、必死に息を整えた。
「……あんたを狙ったのは、その令嬢だけじゃない」
胸の奥が、わずかに沈む。
嫌な予感が、形を持ち始める。
「もう一人……
あんたを“大人しくさせろ”って依頼してきた人物がいる」
「へえ」
私は短く返し、続きを促した。
男は観念したように目を伏せる。
「あんた……
ジョルジュ陛下に、目をつけられてる」
空気が、ひやりと冷えた。
――やはり。
胸の奥で、静かに何かが噛み合う。
これは、ただの脅しではない。
“警告”だ。
これ以上余計なことをするな。
王妃教育だけを受けていろ。
余計な動きを見せるな――と。
……なるほど。
そういう段階に、入ったというわけね。



