第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「……聞きたいことがある」

私がそう告げると、テオは一度だけ瞬きをした。

「じゃあ、とりあえず拘束するね」

淡々とした声。
そのまま剣を構え、低く呟く。

「紅く鋭く――縛れ。スピネル」

テオの剣から紅い魔力が噴き出し、
生き物のようにうねりながら刺客へ絡みついた。
逃げ道を塞ぐように、ぎり、と締まる。

「少しでも動いたら、殺すから」

静かで、冷たい声。
だからこそ、重く響く。

「は、はい……!」

男は震えながら頷いた。

「それで。誰が、こんなことを?」

沈黙。
刺客は唇を噛み、視線を逸らす。


「言わないなら、もういいよね」

紅い拘束が、さらに締まった。

「い、言います! 言いますからっ!」

悲鳴のような声が庭に響く。

「スーザ嬢です……!」


「……そう」

ローゼの取り巻きか…
きっとローゼも絡んでいるのだろう。
私は小さく息を吐いた。


その瞬間、テオが何の迷いもなく言った。

「そいつさ、ローゼってやつの取り巻きだよね
お嬢さまに嫌がらせしてた」

「みんな殺すか…」

空気が凍りつく。

「待って、テオ」

私はすぐに制した。

「殺す気は、最初からなかったはずよね。
脅して、辞退させるつもりだったんでしょう?」

「……それは……」

刺客は視線を泳がせ、しぶしぶ口を開く。

「婚約者候補から辞退するって条件を飲めば……
殺さないつもりでした……」

「そう」

答えは十分だった。