第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ティアナside

ディランは早朝から急ぎの執務が入ったらしい。
結局、まともに話す時間は取れなかった。

――こういうすれ違いも、王妃教育の一部なのだろうか。

そんなことを考えていると、

「ティアナ様」

背後から、澄んだ声がかけられた。

振り返ると、ローゼの取り巻き――確かスーザという子が立っていた。
いつも礼儀正しく、ローゼに忠実な印象の少女だ。

「よろしければ、15時にお茶はいかがでしょう。
ガーデンの奥でお待ちしておりますわ」

にこやかな笑顔。
丁寧な物言い。

……けれど。

胸の奥に、ひやりとしたものが落ちた。

――ああ。
これは、純粋に楽しいお茶会ではない。

そう直感した。

断れば、きっと後で陰口を言われる。
それも、私の知らないところで、巧妙に。

……それは、それで面倒だ。

結局、私は約束の時間に、重い足取りでガーデンへ向かった。

言われた場所に着く。

――誰も、いない。

まあ、そんなことだろうと思った。
思ったけれど。

静まり返った庭の奥で、
風の音だけがやけに大きく響く。

胸の奥で膨らんでいた嫌な予感が、
ゆっくりと、確信へと形を変えていった。