「……いるんだろ」
沈黙の中で、そう呟いた。
ほんのわずかな気配。
レイから報告を受けていなければ、気づけなかっただろう。
「なんだ……バレてるのか」
低い声が返る。
次の瞬間、ベランダからゆるりと人影が入り込んできた。
夜の闇に溶ける黒髪。
そして、鋭く光る紅い瞳。
――彼女の騎士。
「……失礼します、殿下」
静かな声音。
だが、警戒を一切解いていない立ち姿。
「レイから報告を受けていたからな」
「やっぱり、レイには勘付かれてたか」
そう言って、テオはゆるりと笑った。
「ティアナを……よく見ててくれ」
その言葉に、テオは目を丸くする。
「ふーん。そんなこと言われるとは思わなかったな」
からかうような視線。
だが、その奥には探るような鋭さがあった。
「俺より、あんたの方が近くにいられる立場だろ?」
「……」
言葉に詰まった俺を見て、テオは眉をひそめる。
「何、その顔」
しばしの沈黙。
そして、低く問いかける。
「……お嬢様に、顔を合わせづらい?」
「……」
「ねぇ、まさかだけどさ」
一歩、距離を詰めてくる。
「無理矢理、キスでもした?」
「……」
俺の反応を見て、テオは鋭い目つきのまま深くため息をついた。
「最低」
一言。
「最悪」
二言目。
「ろくでなし」
短い言葉が、容赦なく胸に突き刺さる。
グサグサと、確実に。
「……わかってる」
ようやく絞り出した声は、情けないほど弱かった。
テオは肩をすくめる。
「わかってるなら、なお悪いんだけど」
冷たい言葉。
だが、正しい。
「お嬢様は、……あんたの衝動に巻き込んでいい人じゃない」
胸の奥が、痛む。
わかってる…そんなことは。
沈黙の中で、そう呟いた。
ほんのわずかな気配。
レイから報告を受けていなければ、気づけなかっただろう。
「なんだ……バレてるのか」
低い声が返る。
次の瞬間、ベランダからゆるりと人影が入り込んできた。
夜の闇に溶ける黒髪。
そして、鋭く光る紅い瞳。
――彼女の騎士。
「……失礼します、殿下」
静かな声音。
だが、警戒を一切解いていない立ち姿。
「レイから報告を受けていたからな」
「やっぱり、レイには勘付かれてたか」
そう言って、テオはゆるりと笑った。
「ティアナを……よく見ててくれ」
その言葉に、テオは目を丸くする。
「ふーん。そんなこと言われるとは思わなかったな」
からかうような視線。
だが、その奥には探るような鋭さがあった。
「俺より、あんたの方が近くにいられる立場だろ?」
「……」
言葉に詰まった俺を見て、テオは眉をひそめる。
「何、その顔」
しばしの沈黙。
そして、低く問いかける。
「……お嬢様に、顔を合わせづらい?」
「……」
「ねぇ、まさかだけどさ」
一歩、距離を詰めてくる。
「無理矢理、キスでもした?」
「……」
俺の反応を見て、テオは鋭い目つきのまま深くため息をついた。
「最低」
一言。
「最悪」
二言目。
「ろくでなし」
短い言葉が、容赦なく胸に突き刺さる。
グサグサと、確実に。
「……わかってる」
ようやく絞り出した声は、情けないほど弱かった。
テオは肩をすくめる。
「わかってるなら、なお悪いんだけど」
冷たい言葉。
だが、正しい。
「お嬢様は、……あんたの衝動に巻き込んでいい人じゃない」
胸の奥が、痛む。
わかってる…そんなことは。



