第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

そんな中で、兄――アランが予定より早く到着したと知らされた。

嫌な予感がした。

そして、その予感は的中する。

まさか、ティアナと接触しているとは思わなかった。

何でもできる兄。
王の資質を持ち、誰からも認められた存在。

――俺とは違う。

そんな兄が、ティアナと二人で出かけたと聞いた瞬間。

胸の奥が、ひどく、ざらついた。

焦り。
独占欲。
恐怖。

彼女は、あまりにも魅力的だ。

知れば知るほど惹かれる。
あの聡明さも、無防備な優しさも、芯の強さも。

誰だって、好きになる。

実際、ティアナの周囲には油断ならない連中が多すぎる。

……だから、焦った。

走って、探して、見つけて。

彼女の髪に伸びた兄の手を、反射的に掴んでいた。

――奪われる気が、したんだ。

いや。
奪われる資格が、俺にはないとわかっているからこそ。

――だから、あんな真似をしてしまった。

らしくない。
最低だ。

自分勝手で、強引で、
彼女の気持ちを置き去りにしたキス。

それでも。

彼女が他の男に触れられる光景だけは、
どうしても耐えられなかった。

くそっ。

自室のソファに沈み込み、両手で顔を覆う。

後悔ばかりが、遅れて押し寄せてくる。

……俺は、何をしている。

胸の奥が、じわりと痛む。

守りたいのに、
守れていない。

好きなのに、
不安ばかりが募る。

彼女の隣にいたいのに、
自分の弱さが邪魔をする。

それでも――
どうしようもなく、彼女が欲しい。

その矛盾が、苦しくてたまらなかった。