第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「あの……ディランへのプレゼント探し、全面的に協力します」

少し背筋を伸ばしてそう告げると、

「……本当か?」

アラン殿下の声が、わずかに弾んだ。

「はい。ですので――こちらも、交換条件があります」

「ほう。いいだろう」

即答だった。

(よしっ)

心の中で小さく拳を握る。

こうして私は、アラン殿下と並んで店を見て回ることになった。

正直に言えば、ディランの“好きなもの”をすべて把握しているわけではない。
それでも、店先に並ぶ品を眺めていると、自然とディランとの日々が口をついて出た。

剣の話。
無茶な行動。
拗ねたときの顔。
ふとした優しさ。

気づけば、話は止まらなくなっていた。

アラン殿下は品を手に取りながら、時折、穏やかに相槌を打つ。
その表情は意外なほど柔らかく、どこか楽しげだった。

「……そんな顔を、していたのか」

ぽつりと漏れたその言葉に、胸が少しだけ痛む。

この人もまた、弟のことを知らなかったのだ。
――いや、知る機会を失っていたのだ。

その距離を、私は今、言葉で少しずつ埋めている。

そんな、不思議で温かな時間だった。