第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


――視察という名目の、プレゼント選び。
そんな口実で街へ出た日のこと。

「これが終わったら……次は王国創立式典だな」

アラン殿下が、何気ない調子で言った。

そういえば、
王妃教育の合間にそんな話を聞いたような気がする。

「……式典では、何をするんですか?」

「各地に派遣している王国騎士団員を集めてな。一週間ほど合同で訓練を行う」

「いわば、合同合宿みたいなものだ」

なるほど、と頷く。

「多分、伯爵家にも通達が行っているはずだ」

……合同合宿。

その言葉が、胸の奥で小さく引っかかった。

「それって……色々な人が出入りしますよね?」

探るように尋ねると、
アラン殿下は特に疑いもせず頷いた。

「ああ。今年は区切りの良い年でな。例年よりもかなり盛大にやる」

「騎士だけじゃない。使用人や補助要員も増える」

「その分、警備も厚くなるがな」

……なるほど。

人の出入りが多い。
役職も立場も様々。
顔を覚えきれないほどの人数。

それはつまり――
紛れ込む余地があるということ。


(これは……)

ジョルジュ陛下を探るには、
これ以上ない機会かもしれない。

そう思ったことを、私はまだ口にはしなかった。

静かに、
心の中でだけ、駒を並べ始める。