――視察という名目の、プレゼント選び。
そんな口実で街へ出た日のこと。
「これが終わったら……次は王国創立式典だな」
アラン殿下が、何気ない調子で言った。
そういえば、
王妃教育の合間にそんな話を聞いたような気がする。
「……式典では、何をするんですか?」
「各地に派遣している王国騎士団員を集めてな。一週間ほど合同で訓練を行う」
「いわば、合同合宿みたいなものだ」
なるほど、と頷く。
「多分、伯爵家にも通達が行っているはずだ」
……合同合宿。
その言葉が、胸の奥で小さく引っかかった。
「それって……色々な人が出入りしますよね?」
探るように尋ねると、
アラン殿下は特に疑いもせず頷いた。
「ああ。今年は区切りの良い年でな。例年よりもかなり盛大にやる」
「騎士だけじゃない。使用人や補助要員も増える」
「その分、警備も厚くなるがな」
……なるほど。
人の出入りが多い。
役職も立場も様々。
顔を覚えきれないほどの人数。
それはつまり――
紛れ込む余地があるということ。
(これは……)
ジョルジュ陛下を探るには、
これ以上ない機会かもしれない。
そう思ったことを、私はまだ口にはしなかった。
静かに、
心の中でだけ、駒を並べ始める。



