第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

……なぜ、こうなったのだろう。

気づけば目の前には紅茶とケーキが並び、
アラン殿下は腕を組んで真剣な顔でこちらを見つめていた。

「さあ、ティアナ嬢。弟の好きなものを教えてくれ。プレゼントしたい」

「……あの。そういうことではない気がするのですが」

「いや、今さらだ」

即答だった。

「あれは違うんだ、などと言えるか? あいつは信じない。だいぶ、捻くれているからな」

(……それ、誰のせいでしょう)

喉まで出かかった言葉を飲み込む。

「……わかりました」

観念して答えると、アラン殿下はぱっと表情を明るくした。

「助かる」

その切り替えの早さに、思わず呆れる。

「ところで、ティアナ嬢。君の王妃教育は、いつまでだ?」

「あと……2週間ほどでしょうか」

「そうか」

何かを考えるように顎に手を当てる。

「退屈だろう?」

「ええ」

即答。

「発狂したくなるほどに」

一瞬の静寂。

そして、アラン殿下が吹き出した。

「ははっ、正直だな」

その笑いは、王族の仮面を外した、素のものだった。

「なら、丁度いい」

意味深な言い方に、背中を嫌な予感が駆け上がる。

「……何が、でしょうか?」

アラン殿下は、まるで重大な決断を下すように真剣な顔で言った。

「君には、少し付き合ってもらうことになるかもしれん」

――ほら来た。

(……絶対に面倒なやつだ)

胸の奥で、確信だけが静かに積もっていく。