第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


――失礼なことを言ってしまっただろうか。

そう思いながら様子を窺うと、
目の前の人物は、小さくぶつぶつと呟いていた。

「……言わないと伝わらない、か」
「いや、今さらか?」
「だが、タイミングというものが……」

どうやら、一人反省会に入っているらしい。

(……兄弟そろって不器用だな)

私は気配を殺しつつ、そっと立ち上がる。

「それでは……」

一歩、後ろに下がった、その瞬間。

「待て」

低い声に、ぴたりと足が止まる。

「……はい?」

振り返ると、
アラン殿下は腕を組み、真剣な顔でこちらを見ていた。

「ちょっと、頼みがある」

その一言で、胸の奥がざわりと揺れる。

(……ろくな予感がしない)

内心でそう呟きながら、覚悟を決めて問い返す。

「……どのようなご用件でしょうか?」

アラン殿下は、ほんの少しだけ視線を伏せ、
そして決意を固めたように顔を上げた。

――さて、何を言い出すつもりですか、兄殿下。