「……何を入れるつもりだったのですか?」
問いかけると、アラン殿下は少しだけ視線を逸らした。
「一言だけだ」
短い間のあと、どこか照れたように続ける。
「手紙を入れたかった。
『自慢の弟だ。お前らしく生きろ』ってな」
胸がきゅっと締め付けられる。
「……でも、入れられなかった」
「少し、照れくさくてな」
――この人は。
思わず、ため息が漏れた。
「ちゃんと、本人に言わないと駄目です」
はっきりと告げる。
「ディランは今でも、貴方に嫌われていると思っています」
「……な、なんだって!?」
アラン殿下が、信じられないというように身を乗り出す。
「『可哀想』という言葉を、同情だと思ったそうです」
「ディランは、“兄から奪ってしまった”と思っています」
「……違う」
アラン殿下は、頭を抱えた。
「私は、そんなつもりで……」
「私、ディランに前に言ったんです」
静かに続ける。
「まどろっこしい、って」
「……ん?」
「貴方も、ディランとよく似ています」
驚いたようにこちらを見るアラン殿下に、
私はまっすぐ視線を返した。
「言葉が足りないところも、不器用なところも」
「でも――大切に思っている気持ちだけは、本物です」
一瞬の沈黙。
そして、アラン殿下は苦笑した。
「……参ったな」
その笑みは、
王族でも、完璧なアレキサンドライト家の嫡男でもなく。
ただの、
弟を想い続けてきた一人の兄のものだった。
問いかけると、アラン殿下は少しだけ視線を逸らした。
「一言だけだ」
短い間のあと、どこか照れたように続ける。
「手紙を入れたかった。
『自慢の弟だ。お前らしく生きろ』ってな」
胸がきゅっと締め付けられる。
「……でも、入れられなかった」
「少し、照れくさくてな」
――この人は。
思わず、ため息が漏れた。
「ちゃんと、本人に言わないと駄目です」
はっきりと告げる。
「ディランは今でも、貴方に嫌われていると思っています」
「……な、なんだって!?」
アラン殿下が、信じられないというように身を乗り出す。
「『可哀想』という言葉を、同情だと思ったそうです」
「ディランは、“兄から奪ってしまった”と思っています」
「……違う」
アラン殿下は、頭を抱えた。
「私は、そんなつもりで……」
「私、ディランに前に言ったんです」
静かに続ける。
「まどろっこしい、って」
「……ん?」
「貴方も、ディランとよく似ています」
驚いたようにこちらを見るアラン殿下に、
私はまっすぐ視線を返した。
「言葉が足りないところも、不器用なところも」
「でも――大切に思っている気持ちだけは、本物です」
一瞬の沈黙。
そして、アラン殿下は苦笑した。
「……参ったな」
その笑みは、
王族でも、完璧なアレキサンドライト家の嫡男でもなく。
ただの、
弟を想い続けてきた一人の兄のものだった。



