一歩、踏み込むことにした。
「……アラン殿下」
「なんだい?」
「ディランのことを、昔『可哀想だ』とおっしゃったことは、覚えていらっしゃいますか?」
アラン殿下はすぐには答えなかった。
わずかに視線を外し、何かを思い返すように目を細める。
「……言ったな」
静かな肯定。
「その言葉は……どういう意味だったのでしょうか?」
短い沈黙。
やがて、重く息を吐いた。
「ディランはな、昔から体を動かすのが好きだった」
ゆっくりと、噛みしめるように語り出す。
「感性も豊かで、自由に過ごす方がずっと向いていた」
淡い茶色の瞳が、遠くを見る。
「だが……エメラルドの瞳。アレキサンドライトの魔宝石。“選ばれた”王位継承者として」
声が少し低くなる。
「幼い頃から、あいつには向いていないと思った」
「椅子に座り続ける厳しい授業。細かすぎる食事作法。感情を抑え、型にはめられる日々」
唇をきゅっと結ぶ。
「――そして」
短い間のあと、絞り出すように。
「あいつは、笑わなくなっていった」
胸がぎゅっと締めつけられる。
「人形のようにな……」
その声には、嘲りも怒りもない。
ただ、兄として守れなかった者への痛みだけが滲んでいた。
「……アラン殿下」
「なんだい?」
「ディランのことを、昔『可哀想だ』とおっしゃったことは、覚えていらっしゃいますか?」
アラン殿下はすぐには答えなかった。
わずかに視線を外し、何かを思い返すように目を細める。
「……言ったな」
静かな肯定。
「その言葉は……どういう意味だったのでしょうか?」
短い沈黙。
やがて、重く息を吐いた。
「ディランはな、昔から体を動かすのが好きだった」
ゆっくりと、噛みしめるように語り出す。
「感性も豊かで、自由に過ごす方がずっと向いていた」
淡い茶色の瞳が、遠くを見る。
「だが……エメラルドの瞳。アレキサンドライトの魔宝石。“選ばれた”王位継承者として」
声が少し低くなる。
「幼い頃から、あいつには向いていないと思った」
「椅子に座り続ける厳しい授業。細かすぎる食事作法。感情を抑え、型にはめられる日々」
唇をきゅっと結ぶ。
「――そして」
短い間のあと、絞り出すように。
「あいつは、笑わなくなっていった」
胸がぎゅっと締めつけられる。
「人形のようにな……」
その声には、嘲りも怒りもない。
ただ、兄として守れなかった者への痛みだけが滲んでいた。



