第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「出会った頃のディランは……何でも完璧にこなす、冷たい王子でした」

淡々と、記憶をなぞるように言葉を紡ぐ。

「本音を上手に隠していて、誰にも弱さを見せようとしなかった」

一瞬、視線を落とし、そして顔を上げる。

「でも、彼と向き合って……本当の強さも、優しさも、それから――弱さにも触れました」

胸の奥に浮かぶのは、
拗ねた顔、子供みたいな言い分、
仲間たちと無邪気に笑う姿。

「子供みたいに拗ねたり、仲間と笑い合ったり……」

小さく息を吸う。

「そういう姿を見て、どうしようもなく……愛おしいと思ったんです」

言い切ったあと、室内が静まり返る。

やがて――

アラン殿下が、とても穏やかで、どこか嬉しそうな笑みを浮かべた。

その表情を見て、確信する。

やはり、この人はディランを嫌ってなどいない。
むしろ――誰よりも理解している。

「なるほど」

低く、満足げな声。

「ディランが、君に執着している理由がわかったよ」

その言葉は、評価であり、
同時に――兄としての承認だった。