「ほんとに?」
覗き込むように近づいてくるディランの顔に、思わず息をのむ。
もう逃げられない、と観念するしかなかった。
「……噂になっていたので」
「何が?」
「ローゼ嬢が、ディランの部屋から出てきたって」
「あー……」
気の抜けた返事。
その声音が妙に自然で、逆に胸がざわつく。
「夜に押しかけてくるんだ。別に、大した用でもないのに」
さらっと言うその軽さが、少しだけ胸に引っかかった。
「公爵家の令嬢だからね。あまり無下にもできなくてさ」
「……ふーん」
自分でも驚くほど、声が低く出た。
ディランが、面白がるように目を細める。
「なに。妬いてくれてるのかな」
そのまま、私のウィッグへ手を伸ばした。
軽く触れられるだけで、心臓が跳ねる。
「ちょ――」
「それにしても」
指先で髪を弄びながら、楽しそうに続ける。
「なんて可愛い侍女なんだろう。俺専属にしたいな」
「……さっきは、殺気を出しまくっていたじゃありませんか」
じとっと睨むと、ディランは悪びれもせず笑った。
「本気でやられると思いました。ほんとに」
「はは。だって、怪しかったから」
反論できないのが悔しい。
でも、ウィッグに触れたままの手を――どうしても振り払えなかった。
むしろ、その温度に、少しだけ甘えてしまいそうで。
覗き込むように近づいてくるディランの顔に、思わず息をのむ。
もう逃げられない、と観念するしかなかった。
「……噂になっていたので」
「何が?」
「ローゼ嬢が、ディランの部屋から出てきたって」
「あー……」
気の抜けた返事。
その声音が妙に自然で、逆に胸がざわつく。
「夜に押しかけてくるんだ。別に、大した用でもないのに」
さらっと言うその軽さが、少しだけ胸に引っかかった。
「公爵家の令嬢だからね。あまり無下にもできなくてさ」
「……ふーん」
自分でも驚くほど、声が低く出た。
ディランが、面白がるように目を細める。
「なに。妬いてくれてるのかな」
そのまま、私のウィッグへ手を伸ばした。
軽く触れられるだけで、心臓が跳ねる。
「ちょ――」
「それにしても」
指先で髪を弄びながら、楽しそうに続ける。
「なんて可愛い侍女なんだろう。俺専属にしたいな」
「……さっきは、殺気を出しまくっていたじゃありませんか」
じとっと睨むと、ディランは悪びれもせず笑った。
「本気でやられると思いました。ほんとに」
「はは。だって、怪しかったから」
反論できないのが悔しい。
でも、ウィッグに触れたままの手を――どうしても振り払えなかった。
むしろ、その温度に、少しだけ甘えてしまいそうで。



