コン、コン。
不意に、扉を叩く音が響いた。
空気が、一瞬で張りつめる。
「……こっちだ」
低く囁かれ、私は手を引かれた。
有無を言わせない力で、そのままクローゼットの中へ押し込まれる。
扉が、静かに閉まった。
(え、ちょ、なに――!?)
問いを口にする暇もなく、
ディランが私をぐっと引き寄せた。
……近い。
近すぎる。
肩が触れ、呼吸の温度まで分かる距離。
心臓の音が聞こえたら終わりだ。
「殿下……入りますよ」
レイさんの声が部屋に響く。
「……いませんね」
「どちらに行かれたのでしょう」
クローゼットの中で、私は必死に息を殺した。
ディランは微動だにしない。
まるで、最初からこうなると分かっていたかのように。
「……忘れ物は……あ、ハンカチですね」
足音が近づく。
扉の外、すぐそこ。
「はい」
レイさんが部屋に入り、ソファに落ちていたハンカチを拾い上げる。
――ローゼの、だ。
「見事な刺繍ですね」
「ありがとうございます」
ローゼの声が、少しだけ弾む。
「今度、殿下にもプレゼントしたくて。
どういう刺繍がお好みなのかも、聞きたかったのですが……」
(……聞くな、今)
クローゼットの中で、私は全力で念じた。
「さあ……どうでしょうね」
レイさんの声は淡々としている。
不意に、扉を叩く音が響いた。
空気が、一瞬で張りつめる。
「……こっちだ」
低く囁かれ、私は手を引かれた。
有無を言わせない力で、そのままクローゼットの中へ押し込まれる。
扉が、静かに閉まった。
(え、ちょ、なに――!?)
問いを口にする暇もなく、
ディランが私をぐっと引き寄せた。
……近い。
近すぎる。
肩が触れ、呼吸の温度まで分かる距離。
心臓の音が聞こえたら終わりだ。
「殿下……入りますよ」
レイさんの声が部屋に響く。
「……いませんね」
「どちらに行かれたのでしょう」
クローゼットの中で、私は必死に息を殺した。
ディランは微動だにしない。
まるで、最初からこうなると分かっていたかのように。
「……忘れ物は……あ、ハンカチですね」
足音が近づく。
扉の外、すぐそこ。
「はい」
レイさんが部屋に入り、ソファに落ちていたハンカチを拾い上げる。
――ローゼの、だ。
「見事な刺繍ですね」
「ありがとうございます」
ローゼの声が、少しだけ弾む。
「今度、殿下にもプレゼントしたくて。
どういう刺繍がお好みなのかも、聞きたかったのですが……」
(……聞くな、今)
クローゼットの中で、私は全力で念じた。
「さあ……どうでしょうね」
レイさんの声は淡々としている。



