第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「そうですね。
 まず――オリバー団長には」

私は箱をひとつ差し出した。

「高級な、特注の筋力強化用ダンベルを」

「……え?」

続けて、もう一つ。

「そしてエリック副団長には、こちら。
 貴重な初版本です」

2人は箱と本を見比べ、それから揃ってこちらを見る。

「まずは、お二人に」

「い、いや……これは……」

オリバー団長は明らかに動揺していた。
“駄目だ”と思っているのは分かる。
――けれど、“欲しい”という気持ちが視線にだだ漏れだ。

エリック副団長の方を見ると、こちらも顔が引きつっている。

「……なぜ、これが」

「そちらも、探すのにかなり苦労しました。
 よろしければ、お譲りします」

その一言に、2人は一瞬だけ視線を交わし――
そして、ぐっと品を受け取った。

「……分かりました。試合は受けましょう」

「私も、賛成です」

その瞬間。

ドタドタと音を立てて、部屋になだれ込んでくる第2騎士団の面々。

「ずるいですよ! 団長たちだけ!」

「そうだそうだ!」

「落ち着いてください」

私は軽く手を上げて制し、続ける。

「もう一つ。
 第2騎士団が勝った場合には――」

一拍置いて。

「令嬢たちとの交流会を設けましょう」

次の瞬間。

「うそだろ!!」

「やったーーー!!」

「絶対勝ちますよーー!!」

一気に湧き上がる歓声。
……意外とノリがいい。
貴族出身者が多いとは聞いているが、
出会いの場には、相当飢えているらしい。

その様子を眺めていたセナが、小声で呟いた。

「……まさか。そんな条件で、本当にいいんですか」

「案外、そういうものだよ」

くつくつと喉を鳴らしながら、ルーク団長は笑う。

「人は理屈より、欲と夢に弱い」

その言葉に、私は苦笑した。