第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

陛下と二人きりで行われた、あの試験。

あのときのディランの慌てた顔が脳裏に浮かぶ。
……きっと、心配をかけてしまったのだろう。

だけど、今はまだ言うべきじゃない。

ディランにとって、陛下は“家族”だ。
証拠もないまま疑念を口にすれば、余計な不安を背負わせるだけになる。

――だから、黙っている。

それでも。

陛下が何かを企んでいる。
その確信だけは、胸の奥で静かに、しかし確かに膨らんでいた。

ディランの部屋の場所を教わり、私は廊下を進む。

そして、角を曲がる直前――
ふいに足が止まった。

(……え)

視界の先にいたのは、ローゼだった。

なぜ。
どうして、ディランの部屋から……?

一瞬、噂話が脳裏をよぎる。

――本当、だったの?

心臓が、嫌な音を立てる。

ディランの姿は見えない。
けれど、見間違えるはずがない。

紛れもなく、彼の部屋から出てきたのは――ローゼだった。