父は、
私を侍女ではなく、
騎士に仕立てあげようとしていた。
ムーンストーンの適性を得たのだから、
当然だと言わんばかりに。
——けれど。
私は、嫌だった。
剣を振ることはできる。
訓練にも、ついていけた。
けれど、
それを「望んだ」ことは、一度もない。
私の手は、
誰かを傷つけるためのものではない。
そう思いながらも、
逆らう術はなかった。
そんな頃だ。
「こんにちは」
不意にかけられた、幼い声。
振り向くと、
そこにいたのは小さな少女だった。
柔らかなスミレ色と桃色の髪、
澄んだ蒼い瞳。
まだ子どもなのに、
不思議とこちらを“見ている”目。
「ねぇ、私の侍女にならない?」
あまりにも自然に、
そう言われて、言葉を失った。
「……なぜ、侍女、なのですか?」
戸惑いながら、そう返す。
「私は今、剣を持っていますし……」
すると少女は、
少しだけ首を傾げた。
「え?」
次の瞬間、
何気ない調子で言う。
「だって、服のしわが綺麗に伸びてるでしょ」
視線が、
私の袖口に落ちる。
「髪も、ちゃんと手入れされてる」
「それに……」
私の手を、じっと見つめて。
「手荒れ、してるね」
——心臓が、跳ねた。
「剣を持つ手って感じじゃない」
静かな断定。
「誰かの世話をする人の手」
一瞬、言葉が詰まる。
「……失礼、だったかな?」
そう言って、
少女は少しだけ困ったように笑った。
その笑顔を見た瞬間。
胸の奥で、
何かが、はっきりとほどけた。
私を侍女ではなく、
騎士に仕立てあげようとしていた。
ムーンストーンの適性を得たのだから、
当然だと言わんばかりに。
——けれど。
私は、嫌だった。
剣を振ることはできる。
訓練にも、ついていけた。
けれど、
それを「望んだ」ことは、一度もない。
私の手は、
誰かを傷つけるためのものではない。
そう思いながらも、
逆らう術はなかった。
そんな頃だ。
「こんにちは」
不意にかけられた、幼い声。
振り向くと、
そこにいたのは小さな少女だった。
柔らかなスミレ色と桃色の髪、
澄んだ蒼い瞳。
まだ子どもなのに、
不思議とこちらを“見ている”目。
「ねぇ、私の侍女にならない?」
あまりにも自然に、
そう言われて、言葉を失った。
「……なぜ、侍女、なのですか?」
戸惑いながら、そう返す。
「私は今、剣を持っていますし……」
すると少女は、
少しだけ首を傾げた。
「え?」
次の瞬間、
何気ない調子で言う。
「だって、服のしわが綺麗に伸びてるでしょ」
視線が、
私の袖口に落ちる。
「髪も、ちゃんと手入れされてる」
「それに……」
私の手を、じっと見つめて。
「手荒れ、してるね」
——心臓が、跳ねた。
「剣を持つ手って感じじゃない」
静かな断定。
「誰かの世話をする人の手」
一瞬、言葉が詰まる。
「……失礼、だったかな?」
そう言って、
少女は少しだけ困ったように笑った。
その笑顔を見た瞬間。
胸の奥で、
何かが、はっきりとほどけた。



