走った。
廊下の石床を蹴る音が、やけに大きく響く。
胸の奥で膨らみ続ける嫌な予感が、呼吸を浅くしていく。
——あの扉だ。
重厚な装飾の扉の前に、二人の騎士団員が立ちはだかっていた。
「止まりなさい、殿下」
「どいてくれ」
自分の息が、わずかに荒いのがわかる。
「中にいるのは、ティアナだろう」
「はい。しかし——」
「今すぐ会う必要がある」
一歩踏み出す。
だが、騎士団員は剣の柄に手をかけ、静かに首を振った。
「陛下の命です。この扉は、許可なく開けられません」
「……陛下が?」
その言葉に、騎士団員は一瞬だけ視線を伏せた。
「現在、中では特別試験が行われております」
胸が、ぎゅっと締めつけられる。
「特別試験?」
「詳細は、お答えできません」
扉の向こうは、異様なほど静かだった。
人の気配も、声も、何ひとつ感じない。
——静かすぎる。
「……ティアナ」
思わず名前が零れる。
返事はない。
「中で、何をしている?」
「……」
沈黙。
その沈黙こそが、答えだった。
扉に手を伸ばす。
だが、騎士団員が一歩前に出る。
「殿下、どうか」
「俺は、次期国王だぞ」
低く押し殺した声。
それでも、騎士団員は揺るがない。
「それでも、です」
はっきりとした拒絶。
その瞬間、理解してしまった。
——俺は、ここでは無力だ。
扉一枚の向こうで、
大切な人が何をされているのかも知らずに。
(……あなたは)
(何を、させている)
その時だった。
扉の向こうから、ほんのわずかに——
歪んだ魔力の気配が、かすかに漏れた。
「……っ」
胸の奥が、強く、痛むほどに跳ねた。
奥歯を噛みしめる。
止まれと言われても、止まれるはずがない。
廊下の石床を蹴る音が、やけに大きく響く。
胸の奥で膨らみ続ける嫌な予感が、呼吸を浅くしていく。
——あの扉だ。
重厚な装飾の扉の前に、二人の騎士団員が立ちはだかっていた。
「止まりなさい、殿下」
「どいてくれ」
自分の息が、わずかに荒いのがわかる。
「中にいるのは、ティアナだろう」
「はい。しかし——」
「今すぐ会う必要がある」
一歩踏み出す。
だが、騎士団員は剣の柄に手をかけ、静かに首を振った。
「陛下の命です。この扉は、許可なく開けられません」
「……陛下が?」
その言葉に、騎士団員は一瞬だけ視線を伏せた。
「現在、中では特別試験が行われております」
胸が、ぎゅっと締めつけられる。
「特別試験?」
「詳細は、お答えできません」
扉の向こうは、異様なほど静かだった。
人の気配も、声も、何ひとつ感じない。
——静かすぎる。
「……ティアナ」
思わず名前が零れる。
返事はない。
「中で、何をしている?」
「……」
沈黙。
その沈黙こそが、答えだった。
扉に手を伸ばす。
だが、騎士団員が一歩前に出る。
「殿下、どうか」
「俺は、次期国王だぞ」
低く押し殺した声。
それでも、騎士団員は揺るがない。
「それでも、です」
はっきりとした拒絶。
その瞬間、理解してしまった。
——俺は、ここでは無力だ。
扉一枚の向こうで、
大切な人が何をされているのかも知らずに。
(……あなたは)
(何を、させている)
その時だった。
扉の向こうから、ほんのわずかに——
歪んだ魔力の気配が、かすかに漏れた。
「……っ」
胸の奥が、強く、痛むほどに跳ねた。
奥歯を噛みしめる。
止まれと言われても、止まれるはずがない。



