第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


ジョルジュside

部屋の外。
ジョルジュは、差し出された報告書に静かに目を落とした。

魔宝石の反応。
魔力の流れ。
共鳴の度合い。

淡々とした記述の中に、ひとつだけ異質な数字が混じっている。

(……抑えたか)

暴走も拒絶もない。
だが、従順でもない。

“抗いながら形を合わせた”――そんな印象。

(やはり、あの子は……)

宝石の色の変化は、通常の適性判定では起こらない。
まして、宝石側が“呼吸”するように反応するなど、本来ありえない。

報告書の端に記された一文が、彼の視線を止めた。

——共鳴反応、予測値を大幅に超過。

ジョルジュの指先が、紙を軽く叩く。
その仕草は静かだが、どこか愉悦を含んでいた。

(面白い)

ただ魔力量が多いだけでは、この反応は出ない。
流れを読み、選び、拒まず、しかし完全には委ねない。

扱いづらい。
だが、その分だけ価値がある。

(……やはり素質は十分だ)


報告書の最後の行に、彼は指を滑らせた。

——魔宝石側の“吸引”が、対象の魔力構造に適合。

(……適合、か)

その言葉に、彼の目が細くなる。

魔力構造が“適合”するということは、
共鳴だけではなく、もっと深い部分――
血に刻まれた性質までもが、宝石に応じたということ。

(やはり、あの血は……)

彼はそこで思考を切り、報告書を閉じた。
その表情には、満足とも期待ともつかない影が落ちている。

扉の向こうにいる少女を思い浮かべながら、
ジョルジュは静かに歩き出した。

まるで、すでに“使い道”を決めているかのように。