「ティアナ・ラピスラズリ様」
「こちらへお越しください」
案内されたのは、ローゼとは反対側の廊下だった。
人の気配が薄く、壁にかかった燭台の炎だけが、かすかに揺れている。
立ち止まった先には、重厚な扉が一つ。
装飾はなく、取っ手だけが鈍く光っていた。
「……中へ」
促されるまま足を踏み入れた瞬間——
ガチャリ、と背後で扉が閉じた。
重く、確実に。
まるで“外界”を断ち切るように。
その一瞬で、空気が変わった。
温度が下がり、音が吸い込まれる。
——嫌な予感がする。
罠か。
試験か。
それとも、もっと別の何かか。
まだ何も調べていない。
なのに——悟られたのだろうか。
私が、警戒していることを。
部屋の中央に置かれていたのは、小さな机と宝石箱。
その横に、一枚の紙。
『宝石を鑑定し、偽物を選べ』
……そう来たか。
私は椅子に腰掛け、静かに手袋をはめる。
箱に触れる前から、かすかに黒いモヤのようなものが漂っているのを感じた。
蓋を開ける。
どれも美しく、申し分ない輝きを放つ宝石たち。
だが、その中に——一つだけ、違うものがある。
(これ……)
手に取るまでもない。
他と比べて、カットがわずかに浅い。
精巧だが、完璧ではない。
——偽物。
私はそれを指定された場所へ置いた。
沈黙。
誰も、何も言わない。
だが、見られている気配だけが、背中に張りつく。
次の指示が目に入る。
『この宝石に、魔力を注げ』
……何を測るつもりだ。
魔力量か。
適性か。
それとも——“別の何か”か。
机の上に置かれた透明な宝石は、以前の魔宝石適正判定に似ている。
《魔宝石適正判定》。
一切の色を持たない透明な魔法石。
まだ何者にも染まっていない“空の器”。
その石に触れた瞬間、
魔力の質、精神の在り方、感情の傾向、意志の強度――
すべてが同時に測定されるもの。
けれど、あの時とは違う。
胸の奥が、ひどく冷える。
まるで、触れた瞬間に“何か”が目を覚ますような——
そんな予感がした。
「こちらへお越しください」
案内されたのは、ローゼとは反対側の廊下だった。
人の気配が薄く、壁にかかった燭台の炎だけが、かすかに揺れている。
立ち止まった先には、重厚な扉が一つ。
装飾はなく、取っ手だけが鈍く光っていた。
「……中へ」
促されるまま足を踏み入れた瞬間——
ガチャリ、と背後で扉が閉じた。
重く、確実に。
まるで“外界”を断ち切るように。
その一瞬で、空気が変わった。
温度が下がり、音が吸い込まれる。
——嫌な予感がする。
罠か。
試験か。
それとも、もっと別の何かか。
まだ何も調べていない。
なのに——悟られたのだろうか。
私が、警戒していることを。
部屋の中央に置かれていたのは、小さな机と宝石箱。
その横に、一枚の紙。
『宝石を鑑定し、偽物を選べ』
……そう来たか。
私は椅子に腰掛け、静かに手袋をはめる。
箱に触れる前から、かすかに黒いモヤのようなものが漂っているのを感じた。
蓋を開ける。
どれも美しく、申し分ない輝きを放つ宝石たち。
だが、その中に——一つだけ、違うものがある。
(これ……)
手に取るまでもない。
他と比べて、カットがわずかに浅い。
精巧だが、完璧ではない。
——偽物。
私はそれを指定された場所へ置いた。
沈黙。
誰も、何も言わない。
だが、見られている気配だけが、背中に張りつく。
次の指示が目に入る。
『この宝石に、魔力を注げ』
……何を測るつもりだ。
魔力量か。
適性か。
それとも——“別の何か”か。
机の上に置かれた透明な宝石は、以前の魔宝石適正判定に似ている。
《魔宝石適正判定》。
一切の色を持たない透明な魔法石。
まだ何者にも染まっていない“空の器”。
その石に触れた瞬間、
魔力の質、精神の在り方、感情の傾向、意志の強度――
すべてが同時に測定されるもの。
けれど、あの時とは違う。
胸の奥が、ひどく冷える。
まるで、触れた瞬間に“何か”が目を覚ますような——
そんな予感がした。



