第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「うむ。ご苦労」

食事の終わりを告げる声に、
全員の背筋が伸びる。

「それでは。
 今から名前を呼ぶ者は、残りなさい」

胸の奥が、ひくりと揺れた。

「ローゼ・タンザナイト」

「……はい」

「ティアナ・ラピスラズリ」

「はい」

「以上、2名」

淡々とした声。

「私と、話をしよう」

そう告げられ、
他の令嬢たちは一礼し、静かに退室していく。

扉が閉まる音が、
やけに大きく響いた。

「さて」

陛下は、2人を見比べる。

「とても良かった。
 この状況の中で、堂々としていた」

その言葉に、
褒められているはずなのに、背筋が冷える。

「まず、ローゼ嬢」

視線が向けられる。

「長年、婚約者候補としての自覚がある」

一つ一つ、
確認するような口調。

「立ち振る舞い。
 所作。
 態度——すべて、素晴らしかった」

「……有り難きお言葉です」

ローゼは、深く頭を下げる。


「そして——次は、ティアナ嬢」

呼ばれ、背筋を伸ばす。

「他の令嬢と比べ、
 婚約者候補として名が挙がったのは、比較的最近だな」

——確認するような声。

「それにもかかわらず、
 ここまで“整った魅せ方”をする者は、そう多くない」

“魅せ方”。

その言葉に、
胸の奥が、かすかにざわつく。

「肝が据わっている」

「……ありがとうございます」

「さて」

陛下は、満足したように頷く。

「そんな2人には、
 特別教育を受けてもらおう」

「特別……教育、ですか?」

ローゼが、小さく息を呑む。

「大したことではない。
 それぞれ、別の部屋で行う」

その合図で、使用人が入ってくる。

「ローゼ・タンザナイト様。
 こちらへ」

「……はい」

ローゼが案内される部屋が、ちらりと見えた。

書棚。
机。
整然とした書斎。

——筆記試験だろうか。
王妃教育の延長線。
そう思える、普通の部屋。