「うむ。ご苦労」
食事の終わりを告げる声に、
全員の背筋が伸びる。
「それでは。
今から名前を呼ぶ者は、残りなさい」
胸の奥が、ひくりと揺れた。
「ローゼ・タンザナイト」
「……はい」
「ティアナ・ラピスラズリ」
「はい」
「以上、2名」
淡々とした声。
「私と、話をしよう」
そう告げられ、
他の令嬢たちは一礼し、静かに退室していく。
扉が閉まる音が、
やけに大きく響いた。
「さて」
陛下は、2人を見比べる。
「とても良かった。
この状況の中で、堂々としていた」
その言葉に、
褒められているはずなのに、背筋が冷える。
「まず、ローゼ嬢」
視線が向けられる。
「長年、婚約者候補としての自覚がある」
一つ一つ、
確認するような口調。
「立ち振る舞い。
所作。
態度——すべて、素晴らしかった」
「……有り難きお言葉です」
ローゼは、深く頭を下げる。
「そして——次は、ティアナ嬢」
呼ばれ、背筋を伸ばす。
「他の令嬢と比べ、
婚約者候補として名が挙がったのは、比較的最近だな」
——確認するような声。
「それにもかかわらず、
ここまで“整った魅せ方”をする者は、そう多くない」
“魅せ方”。
その言葉に、
胸の奥が、かすかにざわつく。
「肝が据わっている」
「……ありがとうございます」
「さて」
陛下は、満足したように頷く。
「そんな2人には、
特別教育を受けてもらおう」
「特別……教育、ですか?」
ローゼが、小さく息を呑む。
「大したことではない。
それぞれ、別の部屋で行う」
その合図で、使用人が入ってくる。
「ローゼ・タンザナイト様。
こちらへ」
「……はい」
ローゼが案内される部屋が、ちらりと見えた。
書棚。
机。
整然とした書斎。
——筆記試験だろうか。
王妃教育の延長線。
そう思える、普通の部屋。



