その日の夜——。
月明かりが、冷たく差し込むなかで、
「やっほー、お嬢さま」
ひそやかな声とともに、影がひとつ現れる。
「……いいところに来たね、テオ」
「お嬢さまが俺に会いたいかと思ってね」
その姿を見た瞬間、張りつめていた胸の奥が、わずかに緩む。
けれど、安堵は長く続かない。夜気が、妙に重い。
私は簡潔に、ジョルジュ陛下のこと、
そしてディランを見る視線の“異質さ”を語った。
「……何も、なければいいんだけど」
言い終えたあと、部屋の空気が一拍だけ止まる。
テオは、静かに頷いた。
「わかった」
その声は軽いのに、どこか底が深い。
余計な質問は一つもない。
「任せて」
短い言葉なのに、妙に心臓の奥を掴まれる。
「……ありがとう。
無理は、しないでね」
「うん」
いつもの軽い返事。
だが、その目はすでに“夜の仕事”の色に沈んでいた。
「お嬢様も、気をつけて」
「ええ」
短く返した瞬間——
テオの輪郭が、ふっと揺らぎ、
音もなく闇へと溶けていく。
まるで、最初からそこにいなかったかのように。
残された部屋には、
月明かりと、夜の静けさだけが戻る。
だがその静けさは、
さっきまでとは、まるで違うものだった。
——動き出した。
胸の奥で、はっきりとそう告げる声がした。
月明かりが、冷たく差し込むなかで、
「やっほー、お嬢さま」
ひそやかな声とともに、影がひとつ現れる。
「……いいところに来たね、テオ」
「お嬢さまが俺に会いたいかと思ってね」
その姿を見た瞬間、張りつめていた胸の奥が、わずかに緩む。
けれど、安堵は長く続かない。夜気が、妙に重い。
私は簡潔に、ジョルジュ陛下のこと、
そしてディランを見る視線の“異質さ”を語った。
「……何も、なければいいんだけど」
言い終えたあと、部屋の空気が一拍だけ止まる。
テオは、静かに頷いた。
「わかった」
その声は軽いのに、どこか底が深い。
余計な質問は一つもない。
「任せて」
短い言葉なのに、妙に心臓の奥を掴まれる。
「……ありがとう。
無理は、しないでね」
「うん」
いつもの軽い返事。
だが、その目はすでに“夜の仕事”の色に沈んでいた。
「お嬢様も、気をつけて」
「ええ」
短く返した瞬間——
テオの輪郭が、ふっと揺らぎ、
音もなく闇へと溶けていく。
まるで、最初からそこにいなかったかのように。
残された部屋には、
月明かりと、夜の静けさだけが戻る。
だがその静けさは、
さっきまでとは、まるで違うものだった。
——動き出した。
胸の奥で、はっきりとそう告げる声がした。



