「……そうじゃなくてさ」
ラピスラズリを胸に抱いたまま、ぽつりと漏れる声は、どこか震えていた。
「何か、気になることでも?」
アリスが問いかける。穏やかな声なのに、部屋の空気がわずかに揺れた気がした。
「ジョルジュ陛下の……
ディランを見る目」
言葉を探しながら、ゆっくり続ける。
「あれ、孫を見る目じゃなかった」
「次期国王として、厳しく見ている……というわけではなく?」
アリスが小首をかしげる。その無邪気さが、逆に胸をざわつかせた。
「うん……」
首を振ると、背筋に冷たいものが走る。
「もっと……奥が冷える感じ」
「感情があるようで、ないというか……」
脳裏に、ふと浮かぶ。
——あのときのガイル。
「……ガイルが、私に向けた目と、同じだった」
アリスの表情が、すっと変わった。
まるで、薄い膜が剥がれ落ちたように。
「……それは」
慎重に、しかし逃げ場を与えない声音で言う。
「“器”として見ていた、ということですか?」
「……うん」
けれど、すぐに弱々しく付け足す。
「ただの、気のせいかもしれないけど」
「……いいえ」
アリスは即座に否定した。
その声は、いつになく低く、静かだった。
「お嬢様の勘は、今まで一度も外れたことがありません」
「……そう、かな」
「はい」
断言。
その瞬間、部屋の温度が一度下がったように感じた。
「少し、調べてみましょうか」
アリスの瞳は、もう侍女のそれではなかった。
一瞬、迷う。
「……うん」
でも、すぐに続ける。
「ただし、気をつけて」
「もちろんです」
アリスは深く一礼した。
その所作は美しいのに、どこか“戦いに向かう者”の気配があった。
ラピスラズリを胸に抱いたまま、ぽつりと漏れる声は、どこか震えていた。
「何か、気になることでも?」
アリスが問いかける。穏やかな声なのに、部屋の空気がわずかに揺れた気がした。
「ジョルジュ陛下の……
ディランを見る目」
言葉を探しながら、ゆっくり続ける。
「あれ、孫を見る目じゃなかった」
「次期国王として、厳しく見ている……というわけではなく?」
アリスが小首をかしげる。その無邪気さが、逆に胸をざわつかせた。
「うん……」
首を振ると、背筋に冷たいものが走る。
「もっと……奥が冷える感じ」
「感情があるようで、ないというか……」
脳裏に、ふと浮かぶ。
——あのときのガイル。
「……ガイルが、私に向けた目と、同じだった」
アリスの表情が、すっと変わった。
まるで、薄い膜が剥がれ落ちたように。
「……それは」
慎重に、しかし逃げ場を与えない声音で言う。
「“器”として見ていた、ということですか?」
「……うん」
けれど、すぐに弱々しく付け足す。
「ただの、気のせいかもしれないけど」
「……いいえ」
アリスは即座に否定した。
その声は、いつになく低く、静かだった。
「お嬢様の勘は、今まで一度も外れたことがありません」
「……そう、かな」
「はい」
断言。
その瞬間、部屋の温度が一度下がったように感じた。
「少し、調べてみましょうか」
アリスの瞳は、もう侍女のそれではなかった。
一瞬、迷う。
「……うん」
でも、すぐに続ける。
「ただし、気をつけて」
「もちろんです」
アリスは深く一礼した。
その所作は美しいのに、どこか“戦いに向かう者”の気配があった。



