第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「どうして氷の騎士様なの?」

そう私が聞くと、ミラは待ってましたと言わんばかりに身を乗り出す。

「いつも表情が変わらないですのよ。涼しげに剣を捌いてるって……! 最高にクールですよね!」

目が完全にハートになっている。

「へぇ〜……」

セナ…意外と顔に出るけどな?
そう思いながら目の前のミラをみる。

うっとりとしたまま、どこか遠くを見つめている。

「私のまわりの令嬢も、騎士団員との出会いがほしいってよく言っていますわ」

その言葉に、騎士団統合のときの賭けがふと脳裏をよぎる。

「……もしかしたら、その場を用意できるかもしれません」

「ほんとですの!?」

身を乗り出してくるミラに、思わず苦笑がこぼれた。

「……あまり期待はしないでくださいね」

言い終えたあと、ふたりのあいだに小さな沈黙が落ちる。
ミラはそれでも嬉しそうに微笑んでいて、その横顔がどこか眩しかった。