第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「そうだね……なんだか、テオが大人になってる」

「そうだよ。俺だって、ちゃんと成長してるんだから」

少し誇らしげに言ったあと、テオはふっと表情をゆるめた。

「お嬢さま。今日はね……お嬢さまのこと、甘やかしに来たんだ」

「そうなの? 連れ出してくれないのに」

わざと意地悪く言うと、テオは困ったように頬を掻きながら笑った。

「……よーし、よし」

そう言って、そっと頭に手が置かれる。
大きくて、少し不器用な手。
なのに、驚くほど優しい。

「よく頑張ってるよ」

低くて、落ち着いた声が耳に触れる。

「優しくて、強くて……」

「可愛くて、きれいで」

「笑った顔は、花みたいに咲く」

あまりにも自然に、ためらいもなく言葉が続くから、胸が熱くなる。

「……さすがに、褒めすぎ」

そう言うと、テオはきょとんとした顔をして、すぐに小さく首を振った。

「事実だから」

月明かりの下で言われたその一言は、
静かに、でも逃げられないほど深く胸に落ちた。