第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「それより、テオちゃんいないわね」

静寂を破るように、ルイが口を開いた。

「そうですよ! テオさんに剣の指導、お願いしようと思ってたのに!」

エリックが本気で残念そうに肩を落とす。
……この人、ずいぶんキャラ変わったな。

「休みだ……」

そういえば、この忙しい時期に長期休暇を取ったと、あとからルーク団長に聞いたのを思い出す。


「まさかとは思うけど……ティアナちゃんのところじゃないわよね?」

ルイの視線が、探るようにこちらへ向けられる。

「いや、わりとありえますね」

ユウリが淡々と頷いた。

「あーあ、早く会いたいなー」

レオのあまりに素直な一言に、場にまた静かな風が流れる。

――お嬢様。
大丈夫だろうか。

早く、会いたい。

俺はふと、耳元のアクアマリンのピアスに触れた。
ひんやりとした感触が、胸の奥に灯る熱を、ほんの少しだけ鎮めてくれる。

それでも――
この距離は、やはり遠い。