第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「あれ〜なんか随分楽しそうだね」

その一言をきっかけに、周囲の騎士たちが一斉に姿勢を正し、挨拶を始めた。

「お嬢様。久しぶりです〜」

緑の髪を揺らし、穏やかに笑う――第3騎士団団長、ルークだった。

「ルーク団長、お久しぶりです」

「色々あったみたいですね〜」

「ええ」

どうやら、ガイルの件についてはそれとなく耳に入っているらしい。

「それよりも、話があるってことでしたよね〜」

「そうそう」

「とりあえず、ここだとあれですから。俺の部屋に行きますか」

「そうね」

「俺もお供します」

セナがすっと前に出る。
さすが私の専属護衛騎士だ。

3人はそのままルーク団長の部屋へ向かった。

 

ルーク団長の後に続き、部屋に足を踏み入れる。

「どうぞ〜」

促されて中に入った瞬間、思わず目を瞬かせた。

……とにかく物が多い。

書類、本、小物、謎の道具まで、あちこちに積まれている。
全体的にごちゃごちゃしていて、どこから片付ければいいのか分からないレベルだ。

「……どうして、またこんなに散らかってるんですか!
 俺、3日前に片づけましたよね!」

セナが呆れたように言いながら、本を棚に戻していく。
その手際の良さは、完全に“慣れている人”のそれだった。

「いやぁ、どうも苦手でね」

ルーク団長は困ったように笑い、頭をかく。

セナはテーブルの上の物を手早く端へ寄せ、ソファの前を空けた。
その動きに、妙な信頼感すら覚える。

「お嬢様はこちらに」

「ありがとう」

腰を下ろしながら、
(……本当に、よく面倒を見ているな)
と内心で小さく思った。