第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「そうだよなぁー。だって、ずーっと椅子に座って勉強でしょ? きついよなーー」

レオはそう言って、頭の後ろで腕を組んだ。

「確かに。お嬢様に、王妃の座は窮屈すぎるだろうな」

ロベルトも静かに頷く。

「もしも……ですよ。仮に、お嬢様と殿下との婚約がなくなったとしても……結局、結婚相手は探さなきゃいけないですよね。伯爵家のご令嬢ですし」

アレンが、遠慮がちに呟いた。

「そうなったら、有力候補は……」

その続きを、誰も口にしなかった。
代わりに、視線が一斉に動く。

――今まさに、こちらへ歩いてくる人物へ。

……ジロリ。

「セナ副団長。少し、よろしいですか?」

オリバー副団長。
子爵家の出で、かつてお嬢様と“お見合い”をした人物だ。

胸の奥が、無駄にざわつく。
嫌な汗が、背中を伝う。

「……はい」

そう答えた直後だった。

「あ! テオさんいますかー?」

明るい声とともに、エリックがぶんぶんと手を振りながら駆け寄ってくる。

――やめろ。
今は、ややこしくなる。