第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「それって……恋の、ライバルですか?」

アレンの一言に、思わずじろりと睨む。
視線を受けて、彼は「ひぃっ」と小さく肩をすくめた。

「そのローザとかいうやつが選ばれたりしたらお嬢さんとの婚約、なくなるってことだよね?」

レオが口を開く。

「まあ、そうなるかもしれないけど。でも――それはそれで、ティアナちゃんが悲しむわよ」

ルイの声は、妙に現実的だった。

「……まあ、それも、そっか」

レオがぽつりと呟く。

短い沈黙が落ちる。
その空気を切るように、ユウリが静かに言った。

「でも正直……お嬢様は、“王妃”という立場に向いているとは思えません」

――それは、そうだろう。

あの人は、椅子に座って紅茶を飲み、決断を待つタイプじゃない。
自分で立ち、自分の足で走り、状況の真ん中へ踏み込んでいく人だ。

だからこそ――
あの場所に縛られている今が、俺には、どうしようもなく歯がゆかった。