私の迷いを見抜いたように、レイさんが口を開いた。
「……迷っておられますね」
「はい」
取り繕う気はなかった。
胸の奥にある揺らぎは、隠そうとしても隠しきれない。
「それでいいんです」
「え?」
「今は……それで」
短い言葉だった。
けれど、彼の声音は驚くほど柔らかく、
まるで、迷いそのものを肯定してくれるようだった。
その優しさが、静かに胸の奥へ染み込んでいく。
「……はい」
私は、息を整えるようにして頷いた。
音楽が、ちょうどそのとき終わりを迎える。
最後の余韻が床を滑るように消えていき、
私たちは揃って一歩下がった。
スカートの裾がふわりと揺れ、
レイさんの手がそっと離れる。
その温もりが、まだ指先に残っていた。
そして、綺麗に一礼をする。
「お二人とも、とても素晴らしかったです」
教育係の声が、静まり返った空間に落ちる。
「殿下も、レイさんも、ありがとうございました」
「いえ。では、これで失礼します」
ディランは穏やかに微笑み、
一瞬だけ、私の瞳をまっすぐに見つめた。
その視線は、ほんの刹那なのに、
時間がゆっくりと伸びたように感じられる。
——名残惜しそうに。
彼はそのまま踵を返し、
扉の向こうへ消えていった。
レイさんもまた、丁寧に一礼し、
足音を立てないように気遣いながら部屋を後にする。
残された空間には、
さっきまでの音楽の余韻と、
胸の奥に残る温度だけが、ゆっくりと沈んでいった。
「……迷っておられますね」
「はい」
取り繕う気はなかった。
胸の奥にある揺らぎは、隠そうとしても隠しきれない。
「それでいいんです」
「え?」
「今は……それで」
短い言葉だった。
けれど、彼の声音は驚くほど柔らかく、
まるで、迷いそのものを肯定してくれるようだった。
その優しさが、静かに胸の奥へ染み込んでいく。
「……はい」
私は、息を整えるようにして頷いた。
音楽が、ちょうどそのとき終わりを迎える。
最後の余韻が床を滑るように消えていき、
私たちは揃って一歩下がった。
スカートの裾がふわりと揺れ、
レイさんの手がそっと離れる。
その温もりが、まだ指先に残っていた。
そして、綺麗に一礼をする。
「お二人とも、とても素晴らしかったです」
教育係の声が、静まり返った空間に落ちる。
「殿下も、レイさんも、ありがとうございました」
「いえ。では、これで失礼します」
ディランは穏やかに微笑み、
一瞬だけ、私の瞳をまっすぐに見つめた。
その視線は、ほんの刹那なのに、
時間がゆっくりと伸びたように感じられる。
——名残惜しそうに。
彼はそのまま踵を返し、
扉の向こうへ消えていった。
レイさんもまた、丁寧に一礼し、
足音を立てないように気遣いながら部屋を後にする。
残された空間には、
さっきまでの音楽の余韻と、
胸の奥に残る温度だけが、ゆっくりと沈んでいった。



