社交ダンスの授業。
思わず、遠い目になる。
今の私に一番向いていない。
室内が騒つく。
現れたのは——
眩しいほどの金髪とエメラルドの瞳。
背筋は自然に伸び、歩くだけで空気が整っていく。
「こんにちは」
穏やかな声。
それだけで、張りつめていた空気が一段ほど和らいだ。
ディランだった。
「本日は、私とレイが、ダンスのお相手を務めます」
その言葉に、令嬢たちがざわつく。
期待と落胆、そして探るような視線が入り混じる。
やがて、教育係が一歩前に出た。
「では——ローゼ嬢」
一瞬、場の視線が彼女に集まる。
「そして、ティアナ嬢。前へ」
呼ばれた名に、再びざわめきが走った。
ローゼと、私。
——指名されたのだ。
ディランが、私に一歩近づいたのがわかった。
その気配に、ほんの一瞬だけ心臓が跳ねる。
——けれど。
ローゼが、ぐいっと前に出た。
「ディラン殿下。
お会いしたかったですわ」
甘く高い声。
その視線は、まっすぐに彼だけを映している。
「ありがとう」
ディランは、いつもと変わらない穏やかな笑顔で応えた。
完璧で、隙がない。
その瞬間、私は迷わなかった。
踵を返し、別の方向へ足を進める。
向かった先は——レイさんの前。
「ティアナ嬢。
私がお相手で、よろしいですか?」
眼鏡の奥の瞳が、ほんのわずかに揺れた。
「もちろんです。
よろしくお願いいたします」
そう言って微笑むと、
レイさんはほっとしたように息を吐き、手を差し出した。
私は、その手を迷いなく取った。
——横から、視線を感じる。
ディランだと、わかっていた。
それでも、顔は向けない。
今は、見てはいけない気がしたから。
思わず、遠い目になる。
今の私に一番向いていない。
室内が騒つく。
現れたのは——
眩しいほどの金髪とエメラルドの瞳。
背筋は自然に伸び、歩くだけで空気が整っていく。
「こんにちは」
穏やかな声。
それだけで、張りつめていた空気が一段ほど和らいだ。
ディランだった。
「本日は、私とレイが、ダンスのお相手を務めます」
その言葉に、令嬢たちがざわつく。
期待と落胆、そして探るような視線が入り混じる。
やがて、教育係が一歩前に出た。
「では——ローゼ嬢」
一瞬、場の視線が彼女に集まる。
「そして、ティアナ嬢。前へ」
呼ばれた名に、再びざわめきが走った。
ローゼと、私。
——指名されたのだ。
ディランが、私に一歩近づいたのがわかった。
その気配に、ほんの一瞬だけ心臓が跳ねる。
——けれど。
ローゼが、ぐいっと前に出た。
「ディラン殿下。
お会いしたかったですわ」
甘く高い声。
その視線は、まっすぐに彼だけを映している。
「ありがとう」
ディランは、いつもと変わらない穏やかな笑顔で応えた。
完璧で、隙がない。
その瞬間、私は迷わなかった。
踵を返し、別の方向へ足を進める。
向かった先は——レイさんの前。
「ティアナ嬢。
私がお相手で、よろしいですか?」
眼鏡の奥の瞳が、ほんのわずかに揺れた。
「もちろんです。
よろしくお願いいたします」
そう言って微笑むと、
レイさんはほっとしたように息を吐き、手を差し出した。
私は、その手を迷いなく取った。
——横から、視線を感じる。
ディランだと、わかっていた。
それでも、顔は向けない。
今は、見てはいけない気がしたから。



