第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

花を飾る授業の日。
今日もローゼと同じ班だった。

(……また同じ卓か。いやだな)

そう思いながらも、表情を崩さず、
花材の前に静かに立った。

今日の課題は「綺麗に花を花瓶に合わせて整える」こと。

花の色と花瓶を見る。
そそくさとローゼ達が花瓶を取っていくなか、余った花瓶を手に取る。

この色に合うのは…これかな。
一本の白い花を手に取り、
茎の長さを確かめるために指でなぞった。

その瞬間――
指先に、ちくりとした違和感。

(……ん?)

花びらの間に、何か硬いものが混じっている。
そっと花を開くと、細かいガラス片が紛れていた。

次の瞬間、茎をもつと指に痛みが走る。

「っ……」

反射的に手を引く。
指先に赤い線がにじむ。

(……ガラス。やっぱり)

背後で、押し殺した笑い声が聞こえた。

(最悪……)

でも、ここで顔をゆがめたら負けだ。

私は深く息を吸い、
痛む指をそっと布で押さえながら、
何事もなかったように茎をハサミで整えた。

「ティアナ嬢、どうかしましたか?」
教官が気づきかける。

私はすぐに微笑んだ。

「少し、とげがありました。大丈夫です」

声は落ち着いていた。
けれど、胸の奥はきゅっと縮む。

花瓶に花を挿すたびに、指先がじんと痛む。
そのたびに、心まで揺れるようだった。

(……もう、ほんとに……)

誰にも弱音を吐けない。
泣くわけにもいかない。

涼しい顔を保ちながら、
静かに花をいけ続けた。

けれど、心の奥では――
限界が、すぐそこまで来ていた。